父太郎のお部屋

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【正面から行くか、脇から突くか】J2第2節 栃木SC対ブラウブリッツ秋田のレビュー【魂の肉弾戦】

こんにちは、西公父太郎です。普段はツイッターウェストハムに関してツイートしていますが、好きなブラウブリッツ秋田の試合レビューをやってみたいと思い立ち、先週の日曜日に行われた栃木SCブラウブリッツ秋田に関して色々書き出しました。

 

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栃木の前節は岡山との対戦を落としてしまっていました。昨季10位になった栃木としては更に上を目指したいところですが、17位相手に負けたのは相当ショックかと思います。その衝撃が今節のメンバー変更にも表れていたかと思います。

一方の秋田はというと、前節の群馬戦ではプレッシャーが遅れたことからアフターチャージが多くなってしまいました。秋田はJ2基準のプレーテンポの速さに適応できるよう修正できるかが試されます。

試合前に、解説の戸川健太さんはお互いロングボールを活用するだろうと予測し、栃木の元日本代表であるST矢野選手と秋田のCB増田選手の空中戦が注目ポイントであると言っていました。

そして、両監督の試合前コメントも試合の様子を占うものとなりました。

栃木の田坂監督「お互い似た者同士。球際が強くなるかと。」
秋田の吉田監督「真ん中(MFではなく、センターラインのこと)を強固にする。栃木は正面を突いてくるチーム。」

どちらも肉弾戦を得意とするので、お互い同じ土俵に上がりそうです。その土俵の中でどう刺すかが注目点でした。

まずはフォーメーション図をご覧ください。

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フォーメーション図(グレーが秋田、黄色が栃木)

ホームの栃木は前節から4人を変えた上にフォーメーションも4-4-2から4-2-3-1に変更しました。一方、秋田はメンバーとフォーメーションどちらも前節と変わらず。

早速試合内容に入ります。

秋田の攻撃のポイントは「脇」

タイトルにも書いた題名、「正面から行くか、脇から行くか」。これは双方の攻撃の傾向をようやくしたものです。栃木のアプローチは後述するとして、まずは秋田の行っていた右サイドの「オーバーロード」を見ていきたいと思います。

キックオフから秋田はボールをCB増田選手に戻し、右サイド、守っている栃木からしたら左サイドにロングパスを、STの中村選手を目掛けて蹴り込みます。

この後も何度も秋田ボールとなる度に同じような攻撃を行っていました。トランジッションからこぼれたセカンドボールを取り返したフィールドプレイヤーは右サイドへ長く蹴り込み、GKキックとなった時もST中村選手を目掛けて蹴ります。

この時、秋田の陣形は決まったものでした。

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秋田の行っていた「オーバーロード

画像は5分過ぎくらいの場面です。ST中村選手の後ろにはフリックを待つST齋藤選手、目の前にはCM稲葉選手、そして右サイドラインでは沖野選手がこぼれ球を拾ってからの縦突破を狙っています。CMの輪笠選手は攻撃からの守備の切り替えに備えています。他の場面では上の画像よりも深い位置でしたが、基本的にこの形は変わりませんでした。

ST中村選手が栃木の選手たちと競り合った末のこぼれ球を秋田の選手が狙えば、一目散に栃木の左サイドバック裏、上の画像では右下のゾーンを狙います。私はこれを栃木の「左脇」だと思いました。

「右脇」ではなく「左脇」を狙った理由は、栃木のLB菊池選手を狙ったからだと推測できます。本職がMFであり、身長も172cmである菊池選手にはデュエルが仕掛けやすいと思ったのでしょう。一方、RB吉田選手は身長が178cmあります。

サイドバック裏の侵入に成功すれば、クロスでペナルティエリア内に走り込んだLM茂選手を狙ってクロスします。この試合ではコーナーを奪うことや競り合いの中でファールをもらってFKとなる場面が多かったです。

狭いエリアが思惑通り

秋田は左脇に侵入することで、スペースを出来る限り狭く使うアプローチを取ります。

この左サイドバック裏を狭く使う、栃木の左サイドを「オーバーロード」する戦略は秋田の上背があるST中村選手(178cm)とST齋藤選手(180cm)、そして俊敏力のある沖野選手ととても相性がよかったです。更に、J2レベルでは(多分…汗)大きなサイドチェンジを行えるクラブがあまり多くないと思うんで、栃木がボールを取り返して守備から攻撃に移行する時には左サイド、上記の画像で言う下側を通らなければいけません。秋田両CMの稲葉選手と輪笠選手、そしてバックラインにとったらかなり狭いエリアで守備が出来るので、栃木に対するカウンタープレスが発動しやすくなります。

エリアが狭いと守備的なメリットは、攻撃におけるデメリットでもあります。スペースが狭いとドリブルがしづらくパスコースもなくなります。必然的に避けて通れないデュエルが多くなります。

デュエルが多くなる…これが秋田のプランなのです。球際の激しい秋田からすれば、デュエルが多くなるのは思惑通りで、上手くいけばクロス、フリーキックコーナーキックなどでチャンスがやってきます。試合を決定づけることになった1点目も、フリーキックからの得点でした。

セットプレーのバラエティ

フリーキックコーナーキックが多くなるので、秋田としてはセットプレーを持ち味としたいところです。

秋田のセットプレーに対する姿勢は試合を通してみられました。相手に予測させないための工夫がみられました。最初に奪ったゴールも、多くの選手がPA内で駆け引きをする中、PA前左側には沖野選手、右側には稲葉選手が立っていました。PA右側からフリーキックを蹴ったグラウンダーのボールは稲葉選手へ。これでも十分驚きだったのですが、なんと稲葉選手はスルーをして沖野選手へ。ミドルシュートを叩き込んで得点しました。

フリーキックを得る度に、ボールを囲んで4人で「打ち合わせ」をする姿は印象的でした(RB鈴木選手、RM沖野選手、両CBの増田選手と加賀選手で話し合っていましたね)。34分にもペナルティエリア横からのフリーキックを獲得しましたが、RB鈴木選手は浮かせた感じの頭を合わせやすいクロスではなく、強くて鋭いクロスを入れてきました(ダイレクトシュートとも捉えられるぐらい威力のあるボールでした)。

コーナーキックでも二人目の選手がキッカーの目の前までやってきて、パス交換からクロスを入れるなど終始相手にとってやりづらい状況を作ろうとしていました。バラエティに富んだセットプレーやサインプレーの数々はエンタメ性が高かったです。

オーバーロード」せずとも脇を使う

後半で何度か見られた、印象に残るプレーがありました。

秋田がボールをクリアして栃木のCBがセカンドボールを拾う場合、ST齋藤選手がCBを追いかける姿が何度かありました。CBはタッチラインの方を向いているのでターンをしてGKにパスするのは難しく、更にST齋藤選手の後ろには他の秋田の選手も続いているので、CBとしたらサイドラインにクリアする他ありません。脇をオーバーロードしなくても、カウンタープレスからスローインを奪う事に成功しました。

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後半48:40の場面。こうなるとDF柳選手はクリアする他に選択肢がない。

栃木の攻撃のポイントは「正面」

一方、栃木の攻撃は秋田とは対照的とも言えます。吉田監督の予測した通り、栃木は「正面」を突いてくるチームでした。

秋田は脇を狙いますが、栃木は正面、つまり秋田の両CBと両CMの間を狙います。その中心人物となるのがSTの矢野選手です。矢野選手がロングボールを収めるかセカンドボールを上手く落として、栃木の二列目のLM森選手、AM山本選手、そしてRM植田選手に拾ってもらうのが理想でしょう。

しかし、壁となったのが秋田のCB増田選手の空中戦における圧倒的な強さです。度々デュエルを増田選手が勝利する事態になります。何度か競り合いの中でAM山本選手と良いコンビネーションを見せるのですが、秋田のゴールを脅かすには至りません。

ロングボール戦略が上手くいかない中で、栃木は様々な工夫をします。ST矢野選手がCB増田選手に苦戦するので、競り合いをする対象をもう一人のCB加賀選手に変えたり、サイドラインに移動してボールを受けようとしたり、GKが低い弾道のロングボールを矢野選手に当てたり、矢野選手が秋田の二列目に降りてロングボールを受けようとしました。しかしどれも上手くいかず、二列目に下がるアプローチに至ってはこぼれ球が秋田の選手に行ってしまい逆にカウンターを受ける事態になってしまいました。前半終了間際に見せた、GKのロングボールに対してST矢野選手とAM山本選手が重なって競うシーンには可能性を感じましたが、即興性が高く(しかも偶発的であった可能性も大きいです)、何度も似たようなアプローチを見れるわけではありませんでした。

しかし、別の方法で可能性を見せることはできました。秋田の右サイドオーバーロードは大きなサイドチェンジを行える選手がいないため有効だと書いたのですが、それでも栃木がサイドチェンジに成功した場面もありました。18分頃にRB吉田選手がガンガン右サイドを駆け上がり、コーナーを奪いました。CKもゴールを脅かす事になったのですが、点を取るには至りません。

秋田を押し込んでブロックを組ませた時、栃木は西谷選手と両CBがビルドアップをしていて、秋田のツートップとは数的有利でした。ボールを回しているの、秋田のLM茂選手が不用意に突っ込んできてしまい、LMとLBの空いたスペースに待ち構えていたRM植田選手にパスが出されてしまいました。最終的にLM森選手とLB菊池選手との連携の末、RB吉田選手がクロスを上げるのに成功していました。栃木はボールを上手くコントロールできるクオリティを持った選手が多く、他の場面でもパスワークで秋田守備陣を翻弄した場面は多かったので、ロングボールにこだわっていたのが仇となってしまうような流れになった試合、という印象です。

総評

球際では若干秋田の方が強かったですね。

栃木も肉弾戦がスタイルで譲りたくはなかったのでしょうけれど、負けてしまいました。個人的には丁寧にパスを回した方が可能性を感じられました(AM山本選手とDMの西谷選手と上田選手が印象に残りました)。

上では書ききれなかったのですが、秋田のST中村選手がバイタルエリアに降りて4-1-4-1のフォーメーションで守備をしている感じにしたり、ボールがSBに入った時にわざわざコーナーポール近くまで行って守備をするのが印象的でした。

あと、栃木の攻撃時にRB吉田選手が秋田の空いた左サイドを有効に使ったと書きましたが、後半のある時間に逆にLM茂選手が栃木の空いた右サイドをガンガンドリブルで侵入するプレーも印象的でした。クロスはSTに届かず、とても惜しいチャンスでした。

MOMは…CB増田選手!

全員がハードワークを行うなどして秋田のスタイルを成立させていたので、全員にMOMを与えたいです。しかし、MOMは一人しか選べません。

栃木の攻撃を成立させなかった選手が一番MOMに相応しいと思うので、ST矢野選手を抑えて栃木のテンポに持ち込ませなかった増田選手を選びました。

試合後の田坂監督の悔しそうでしたね。記者に少しだけ強く当たってしまうぐらい悔しさを滲ませていた様子が印象的でした。今回の対戦を似たもの同士の戦いだと形容だけあって、肉弾戦で押し負けてしまったことが心残りだったのかと思います。次の対戦、11月7日がとても楽しみです。

秋田はJ2のテンポに合わせられるかどうかが試される試合でしたが、対応できていたと思います。今後は丁寧にビルドアップする相手に対しても有効な守備が行えるかが試されると思います。

雑感

試合の感想文は何度か書いたことがあるのですが、何度か試合の映像を見返してがっつりノートを取りながら書くのは初めてだったのでとても緊張しました。拙作ですが、最後までお読みいただきありがとうございました。

残念ながら前節の岡山と栃木の対戦は見れなかった+普通に私自身がブラウブリッツ秋田のファン+秋田がJ2初勝利を収めたという歴史的な節目ということもあり、どうしても秋田に関する文章が多くなってしまいました。しかし、記事を書く時は出来る限り中立の立場を保とうとしました。もし不快に感じる栃木SCのファンがいましたら誠に申し訳ございません。

ではまた!