父太郎のお部屋

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【パス回しに対し】J2第2節 ジェフユナイテッド千葉対ブラウブリッツ秋田のマッチレビュー【粘り強さ】

こんにちは、西公父太郎です。

先週に引き続き、今週もブラウブリッツ秋田のマッチレビューを投稿しました。

先週は、群馬戦での課題を見事修正して栃木に勝利しました。北関東連戦を1勝1敗で終えたところで、今度は南関東の千葉へ。秋田はJ2レベルで戦えるチームであることを実証できるのでしょうか。

実況は永田実さん、解説はジェフ千葉のレジェンド・佐藤勇人さんです。

 

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開幕から二戦連続で引き分けと、J1昇格を目指すチームとしてはなんとも歯痒いスタートとなってしまった千葉。一方、クラブ史上J2初勝利を飾った秋田。両チームの現状の違いは、スターティングメンバーに顕著に表れます。

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左がアウェーの秋田、右がホームの千葉


ホームの千葉は前節の愛媛戦から3人を替え、フォーメーションも4-4-2から4-2-3-1に変えました。LDM熊谷アンドリュー選手から高橋選手、RM岩崎選手から福満選手、そしてツートップの一角だったブワニカ選手に替えてトップ下の船山選手を入れました。

一方秋田のメンバーは前節と変わりはありません。

解説の佐藤勇人さんの注目選手は秋田のRB鈴木選手。秋田の戦術の中心で、セットプレーのキッカーとして魅力的だと言っていました。

以下は試合前の監督コメントです。

尹監督「コンディションを整えてきた。ゲームはセカンドボールで決まる。」

吉田監督「粘り強く。(千葉は)バランスの取れたチーム。」

 

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「サイド圧縮」で流れを掴む

秋田は前節に引き続き、「右サイドのオーバーロード」を使います(調べてみたら、一般的には「サイド圧縮」と言われているんですね)。たくさんの選手を千葉の左サイドに配置し、左サイドバックの裏にあるスペース(下の画像では千葉のLB安田選手とCB鈴木選手の後ろの空間)を狙います。

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8'11分のシーン。秋田のGK田中選手はST中村選手をロングキックで狙う。

GKキックを受ける秋田のST中村選手の後ろにはST齋藤選手、横にはRM沖野選手、そして目の前にはCM稲葉選手。ゴールキック、ビルドアップ、タッチラインからのスローインなど、場面を問わずこの攻撃の形は変わりませんでした。

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3'36、ST齋藤のフリックパスでLBとCBの間を抜けたST中村へ

直前まで中継のカメラがベンチに座っている吉田監督の姿を映していたためどういう流れからST齋藤選手にボールが行ったのかはわからないですが、齋藤選手はフリックをLB安田選手とCB鈴木選手の間に通して、走り抜けた中村選手へボールが渡ります。

以下はその直後のプレーです。

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3'43、RM沖野選手のクロスからLM茂選手がゴール。

ボールを受けたST中村選手がRM沖野選手へ渡して、逆サイドに走り込んできたLM茂選手へクロス、シュートでゴール。

試合後に茂選手がインタビューで話していたのですが、秋田は試合前に重要なスカウティングデータをつかんでいたのです。ボールとは逆サイドにいる千葉のディフェンダーはかなりライン(位置)を下げてしまうということがわかっていたみたいです。RM沖野選手がボールを持った際は、千葉のRB米倉選手にあたります。上の図面ではわかりにくいですが、ハイライト動画を見るとRB米倉選手がかなり下がっていたことがわかります。結果として茂選手に広大なスペースを与えてしまいました。RB米倉選手がもう少し位置を上げるか、この場面では一時的にRMとしてプレーしていた見木選手が守備をしに戻ってきていたらまた結果は違ったかもしれません。

カウンター対策で攻撃の機会を手にする

秋田の「サイド圧縮」は様々な場面で相手にとって脅威となります。

千葉が自陣左サイドでスローインを得た時にもそうです。秋田の選手がワラワラいるため、スローインで渡せる味方がいません。最終的に味方に当てるのですが、秋田の選手のプレッシャーによって受けてのプレーはタッチラインを割ってしまい、秋田のスローインとなってしまいます。

秋田の唯一の弱点は「サイドチェンジ」となるのですが、これも中々難しいです。狭いエリアでたくさんの秋田の選手にプレッシャーを受けながら、逆サイドに有効なパスを出すのはとても難しいことです。しかも、中途半端なサイドチェンジをしてしまったら逆サイドに構えるLM茂選手のチャンスとなりかねません。

では千葉が圧縮されたエリアで、目の前にクリアをしたとしても対策されています。CMの稲葉選手と輪笠選手が待ち構えているため、セカンドボールとしてすぐに秋田の選手に回収されてしまい、逆に秋田のチャンスとなってしまいます。秋田が「攻撃」から「守備」への切り替えでチャンスを掴んだ二つの場面を紹介します。

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4'57の場面。こぼれ球をCM稲葉選手が拾い、チャンスに繋げる。

上の画像ではCM稲葉選手がかなり高い場所でボールを持っています。このボールは、タッチライン深めからRB鈴木選手によって放たれたのロングスローがST齋藤選手とLB安田選手によって競われた後の場面です。競り合いではLB安田選手が勝利しますが、こぼれ球は後ろから待ち構えていたCM稲葉選手に落ちます。この後、CM稲葉選手はスルーパスで千葉のCB-SB間を走り抜けたST齋藤選手へ通します。ST齋藤選手のドリブルは惜しくもゴールラインを割って千葉のゴールキックとなってしまうのですが、とてもいいプレーでした。解説の佐藤勇人さんは「齋藤選手に対する稲葉選手のサポートがとても速い」と褒めていました。

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16'49、千葉の短いクリアからCM輪笠選手がゴール

秋田のGKキックはST齋藤選手へ大きく蹴り出され、パスからRM沖野選手が千葉の左SB裏で侵入します。クロスはカットされた後にクリアされながらも、カウンター対策に待ち構えていた輪笠選手がミドルシュートでゴールを決めました。相手にカウンターを許さないどころか、得点を奪ってしまう活躍っぷりです。

ジェフ千葉の攻撃が変わったタイミング

今節の千葉のスタメンから強いメッセージを感じました。ポゼッションで勝つ、というメッセージです。

前節の秋田は、ひたすらロングボールを入れてくる栃木に対し、CB増田選手の活躍によって勝利を掴みました。肉弾戦ならJ2レベルとやり合えるのだと証明した訳ですが、巧みなパスワークへの対応は未知数です。千葉のAM船山選手、そしてDM高橋選手のプレーに注目です。

千葉は前半30分までGKキックにロングボールを多用しました。ターゲットマンとなるのはST大槻選手。相手はCB増田選手、大体の競り合いに負けてしまいます。時々、大槻選手は加賀選手との競り合いを行うために若干秋田の右サイドに位置しますが、CB増田選手が追いかけて競り合いを挑みます。

ST大槻選手が競り合いで負け続ける中でも、千葉はチャンスをいくつか作ります。ガラ空きとなっているST中村選手の左右のスペースを使い、MFラインとDFラインの間のバイタルエリアにどんどん楔を入れます。しかし、攻撃がどう発展しても連携の取れていないクロスかコーナーキックで終わるばかりで、ゴールを脅かすまでは行きません。

千葉の攻撃は28'35分を境に変化します。これまで長く蹴っていたGKを、短く蹴ったのです。千葉はショートパスで

2点リードをして気持ちが楽になっている秋田は無理にプレッシャーをかけません。千葉のビルドアップ隊はドリブルだけで秋田のディフェンスラインをアタッキングサードまで降します。

千葉は流動的な攻撃を仕掛けます。アタッカーがどんどん秋田のCB-SB間を抜けるため、秋田のMF陣がカバーをしに付いて行きます。最終的には6-2-1-1のようなブロックになってしま宇ので秋田のST中村選手が一列降りてブロックを6-3-1にします。

しかし、サッカーピッチの横幅である約70mを埋めるには3人では物足りません。左のハーフスペースに(LM見木選手とポジションを入れ替えた)RM福満選手が運びます。これに対しST中村選手はタックルでボールを奪う上に、ファウルを誘発してフリーキックを得ます。中村選手は攻守の両方で活躍しています。

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29'50、中村選手のディフェンス

前半30分以降、千葉はかなり流動的な攻撃を仕掛けます。良い意味で再現性の無いオフェンスは図面にするのが難しいほどです。

30'45分にも千葉はGKキックから短く繋ぎます。秋田は先程と打って変わって千葉のビルドアップに対してハイプレスを仕掛けます。秋田はST齋藤選手とRM沖野選手が連動して千葉のCB鈴木選手とLB安田選手をピッチの隅に追いやります。しかし、CB鈴木選手が左足で巧みに浮き球を上げてプレスを抜け出します。鈴木選手のロングパスは秋田のCB増田選手が勝ち取るのですが、こぼれ球となって結局千葉ボールをなってしまいます。

前半最後の10分は完全に千葉の流れです。ショートパスによるビルドアップが当たり、千葉はどんどん秋田のペナルティエリアに侵入します。その上に、千葉はたくさんの人数をかけて攻撃するので、秋田の選手がボールを取り返しても有効にカウンタープレスを仕掛けられます。サイドチェンジ、ST中村選手の左右のスペース、そして秋田のCB-SB間を有効に使いながら千葉は秋田のゴールに迫ろうとします。しかし、運なのかアタッカーのクオリティなのか、それとも秋田が持ち前の「粘り強さ」を発揮したのか。原因はわかりませんが、シュートまでは持っていけません。

秋田の弱点を突いた末に…

秋田はCB加賀選手を山田選手と交代します。最初は加賀選手が怪我をしてしまったためだと思っていたのですが、後から吉田監督は「控えの選手もコンディションがよかったため」と言っていました。個人的には、加賀選手よりも山田選手の方がグラウンダーパスに対する守備が良いからだと思っています。

手応えを持ったのか、後半からの千葉の攻撃は前半の最後とあまり変わりはありません。その上、試合に慣れてきたのか千葉の選手たちの間でのワンタッチパスが増えてきます。巧みなパスワークでどんどん秋田のペナルティエリアに侵入していきます。秋田も千葉のポゼッション攻撃を受け入れる姿勢を見せます。

野球では、守備の代わったところに打球が飛んでいく、という事をよく聞きます。サッカーでも同様の話は聞いたことがないのですが、似たようなことがこの試合では起きます。

45'25分。千葉はポゼッションからサイドチェンジ気味のパス回しを行い、RM沖野選手とRB鈴木選手を釣り出します。カバーしに行く秋田の選手もいなかったため、秋田の右サイドの深いゾーンがガラ空きになってしまい、千葉のAM船山選手がそこでポジションを取って見木選手からのパスを受け取ります。ここでAM船山選手とCB山田選手と一対一となって、船山選手のドリブルがゴールラインを割って秋田のゴールキックとなります。

秋田は組織的な守備をするのですが、飛び出してしまった選手の空けたスペースを使われるシーンがいくつかありました。サイドチェンジをされてしまった時に、選手が飛び出してしまう傾向があるっぽうです。次に紹介するシーンでも、千葉は秋田の「釣り出しから空いたスペース」を使います。

59'10分、千葉はこの試合最大のチャンスを作ります。千葉はポゼッション時に、LB安田選手がCBチャン選手に少し大きめのサイドチェンジをします。ボールを持ったCBチャン選手に対し秋田のLM茂選手がプレッシャーをかけに行くのですが、結果的に茂選手の裏に大きなスペースを作ることになってしまいます。千葉はワンタッチで繋ぎ、ST大槻選手にゴール前でのシュートチャンスがやってきますが惜しくもシュートを外してしまいました。

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59'10、千葉最大の好機

直前まで秋田はチーム全体で千葉の深いビルドアップにプレッシャーをかけていたので、千葉のカウンターに対して帰陣する時は全体が間延びしてしまっていました。

66分に秋田はツートップを二枚同時に替えます。前からの運動量を上げて、試合を終わらせる魂胆が見えました。これに合わせて、4-4-1-1だった秋田の守備ブロックは4-4-2となります。前半で千葉が使えていたST中村選手の周りのスペースが埋められてしまいました。これにより、千葉の攻撃が停滞してしまい、放り込みに頼らざるを得ません。
68分、千葉はST大槻選手に代わってブワニカ選手を入れます。しかしCB増田選手との競り合いで勝てず、あまり良い交代策とはなりませんでした。後に千葉は船山選手の代わりに攻撃性能の高い岩崎選手を入れる一方、秋田は上下の運動量の多いLM茂選手とRM沖野選手に代わって國分選手と井上選手を入れてきます。交代で入った千葉の岩崎選手は斜めの走り込みでゴール前に迫る場面がありましたが、千葉の特筆すべき攻撃はこれのみ。攻撃が停滞したまま、秋田の逃げ切りを許してしまいます。

総評

前半の早い時間に得点をし、後半は粘って守り切る。試合前に吉田監督の言っていた「粘り強さ」を発揮し、二節続いて秋田は同じような戦い方で勝利を掴みました。

一方の千葉は、1敗2分。スタートダッシュに失敗してしまいました。

今試合の個人的なMOMは…STの中村選手!!!攻撃時はロングボールのターゲットとなり、守備時はスペースを埋めに奔走したりと攻守にわたって重要な役割を担いました。実質2アシストの沖野選手もMOMに値するのですが、個人的には中村選手の活躍が印象に残りました。

以下は試合後の監督コメントです。

吉田監督「根気を総動員。(加賀選手⇨山田選手の交代に関して)チーム全体のコンディションが良く、控えも試合に出したかった。秋田は最近まで雪が降っていたのにも関わらず、チーム全員でコンディションを維持してくれた。粘り、根気を総動員。」

尹監督「失点が今試合の全て。HTから選手たちに急がないように指示しておいた。(59'10分のチャンスに関して)ああいう崩しを試合開始からできなかった、立ち上がりが課題。ロングボールへの対応が甘かった。」

尹監督のコメントが今試合の展開を物語っていたかと思います。もし秋田が最初の20分で得点できていなかったら、どっちが勝っていてもおかしくなかった試合だと思います。千葉は良いパスワークを度々見せていました。もし秋田が攻め上がる必要のあった展開になっていたら、千葉はもっと多くのチャンスを作れていたはずです。

今節、千葉遠征に帯同できなかったメンバーたちを思った吉田監督のコメントが印象に残りました。

雑感

最後までお読みいただきありがとうございました。

前回の投稿はあまりにも時間をかけ過ぎてしまったので、今回は少し急いで書き上げてしまいました。もし見落とした書き間違えがあったら、誠に申し訳ございません。

ここからは番外編です。今回のマッチレビューで紹介しきれなかったシーンがいくつもあるのですが、戦術ボードアプリで作ってしまったシーンを使わないとなんとなく勿体無い気がしてしまうので、ここで無理やりねじ込みます。

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9'46、千葉が二列目で仕掛けた競り合いにCB増田選手が無理やり参加する

前半の千葉はGKキックから大槻選手を目掛けてロングボールを蹴ることが多かったのですが、9'46分の場面では大槻選手がCM稲葉選手相手に空中戦を仕掛けます。しかし、CB増田選手はこの競り合いに無理やり割って入ってきて、ヘディングでRM沖野選手にパスを出してカウンターに繋げます。

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25'35、RB鈴木選手が釣り上げられ、裏のスペースを使われる

本記事の後半では、秋田の選手が釣り上げられた際の裏のスペースが弱点になり得ると書いたのですが、この場面でそれが顕著でした。LM見木選手によりRB鈴木選手が釣り出されてしまい、AM船山選手が裏のスペースに走り込んでCB加賀選手と一対一を仕掛けられます。ゴールとはならなかったのですが、良い攻撃を千葉は仕掛けました。